認知症ケア ― コミュニケーションのポイント
初任者研修の授業の中でもお話しさせていただいていることなのですが、認知症の方とのコミュニケーションでは、とても大切なポイントがあります。
以下、『 』は初任者研修で実際に使っているテキスト(※)からの抜粋になります。
『認知症の人…を理解する第一歩は、その人なりに構築している認知的世界を尊重し、共感を示すことです。たとえ周りから見て奇異に思えても、その人にとっては「現実」の世界であり、客観的な現実を示して頭ごなしに否定しても理解されることは少ないでしょうし、かえって態度をかたくなにさせることになります。客観的な現実を知らせる前に、相手の立場に立ってその人にとっての「現実」を理解しようと努め、それを受け入れて尊重することが大切です』
認知症の方と接したことがある人ならわかると思いますが、認知症の方はこちらが戸惑うようなことを言われたり、されることがしょっちゅうです。
たとえば、さっきご飯を食べたはずなのに「ご飯はまだ?」とか、自宅にいるのに夕方になると「帰らせていただきます」と外に出かけようとされたりとか…
理解してあげたいという誠実な気持ちから、何度も質問したり、説明したりしているうちに、認知症の方がどんどん険しい顔つきになって怒ってしまわれる…ということもよくありますね。
私がこれまで接してきた認知症の利用者様も、色々な方がいらっしゃいました。
「そろそろ馬の様子を見に行かないといけない時間だ」と靴を履かれるM男さん
「田んぼの見回りに行ってきます」と立ち上がるY枝さん
玄関の犬の置物に向かって「ワンって言いなさい!!」と叱るT子さん
お葬式の読経を聞いて、大爆笑したY子さん
こちらの話がうまく通じることもあれば、通じないこともあり…
認知症の方とのコミュニケーションは時に難しい時があります。
そんな時にはぜひ、ちょっと立ち止まって冒頭の言葉を思い出していただきたいと思います。
馬はもういない、とか、田んぼはもう売ってしまったとか、置物の犬は鳴かないとか、読経は笑うものじゃないとか、そういう説明はいらないんですね。
それは、その方に対して“否定”になってしまうからです。
その方にとっての「現実」(“世界観”みたいなもの)に自分も一緒に入って会話する。
俳優・女優になりきっている自分みたいな感じですね。
ちょっと自分の現実から離れて会話してみる。
そうすると結構伝わりますし、分かり合えることが多くなるように思います。
認知症の方に、いつでも通じる魔法の言葉のようなものはないので、介護職はいつも試行錯誤しています。
ですが、先ほどの一文にもあったように、「相手の立場に立ってその人にとっての「現実」を理解しようと努め、それを受け入れて尊重すること」を忘れなければ、失敗することはあっても、信頼関係につながっていくと思います。
介護職員初任者研修では、認知症とはどのようなものなのか、どのように接したらいいのかなどを学ぶことができます。無料の説明会にもぜひご参加ください。
(※ 一般財団法人 長寿開発センター 介護職員初任者研修テキスト第2版2巻 より抜粋)
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